286 共同相続人Y1の所在が不明だった事案(ただし、共同相続人Y2はY1の所在を把握していた)
事案の概要
・Xが当事務所依頼者、Yが遺産分割の相手方、Aが被相続人
・●は、相続人、被相続人ではなく、既に死亡している人、
・○は、相続人、被相続人ではなく、生存している人
・横線は婚姻関係を示し、縦線は親子関係を示す(実線が実親子、点線が養親子)
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- 被相続人(A)は、依頼者(X)の母。
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- Aの相続人は、長男X、次男Y1、長女B(A死亡後に死亡)の娘Y2
- ①
- Y1は精神疾患を患っており、入退院を繰り返していた。A死亡後は、Y1の世話は主にBがしていた。
XもY1を心配し、Y1に会いたかったが、BがY1の入院先を教えてくれず、XとY1を会わせてくれない。 - ②
- その後、Bが死亡。Y1の世話は、Bの娘Y2が引き継いだ。
Xは、Y2にY1の所在を尋ねるが、Y2もY1の所在を教えてくれない。 - ③
- 遺産は不動産のみ。
争った点と当事務所の事件処理
①争いになった点
Y1の所在が分からない(ただ、Y2は所在を把握しているので、完全に行方不明というわけではない)という状況でどのように遺産分割を進めるかが問題になりました。
②受任後の処理と結果
Y1の住民票を取得しましたが、Y1は住民票上の住所は遺産である不動産の所在地で、そこにはY2が住んでいました。Y1は住んでいませんでした。
そこで、区役所にY1の所在を尋ねましたが、個人情報を理由に回答を拒否されました。
そこで、実際には、Y1は住民票上の住所には居住していないものの、「居住しているもの」として、遺産分割の調停を申し立てました。
裁判所が、Y1の住民票上の住所(Y2が居住してる場所)に、Y1宛の書類を送ったところ、Y2がY1にその書類を渡したようで、Y1から「自分は法定相続分の共有持分を取得できればよい」という返事が裁判所に対してありました。
その結果、結局Y1は裁判所には現れなかったものの、「不動産はY1とY2が共有で取得し、XはY2からXの法定相続分相当の代償金をもらう」という内容で決着しました。
以上