219 遺産分割協議書の偽造の立証に成功した件
事案の概要
・Xが当事務所依頼者、Yが遺産分割の相手方、Aが被相続人
・●は、相続人、被相続人ではなく、既に死亡している人、
・○は、相続人、被相続人ではなく、生存している人
・横線は婚姻関係を示し、縦線は親子関係を示す(実線が実親子、点線が養親子)
- ①
- 遺産は不動産のみ
- ②
- A死亡の約6年後Bが死亡
- ③
- A死亡後、遺産分割協議は行われていません。
- ④
- X2の後見開始を機に、X1がAの残した不動産の登記を確認したところ、相続を原因としてAからBに移転登記され、Bの死亡によってさらにBからY1に移転登記されていることが判明しました。
- ⑤
- X1がY2から遺産分割協議書を入手したところ、Aの遺産分割協議書のX1の署名が、X1の筆跡ではありませんでした。
- ⑥
- X1は、別の法律事務所に遺産分割協議無効確認訴訟を依頼しました。1審では、遺言書の署名がX1の筆跡ではないことは認められましたが、X1が代書を承諾した上で実印を預けたと認定されて敗訴し、X1は、当事務所に相談に来られました。
争った点と当事務所の事件処理
- ①
- 1審を担当した弁護士は、相続分野での学術論文も書いている弁護士で、一通りの主張はしていました。また、X1自身、1審の尋問で自ら実印をBに預けたことを認めていました。さらに、遺産分割協議成立前後の事情も含めて「X1が代書を承諾していたはず」の事情や、「Bにおいて偽造する動機がないこと」も丁寧に認定されており、1審の判決を覆すのは極めて難しい事件でした。
- ②
- 1審の判決分と全ての証拠を詳細に検討しなおし、いくつかの小さな綻びから戦略を立て、丁寧に1審判決の不合理な点の立証に努めた結果、「Bが遺産分割とは別の目的でX1から預かった実印を冒用して遺産分割協議書を作成した」と認定され、逆転勝訴をすることができました。
- ③
- その後、遺産分割協議をやり直すこととなり、X1は相当な代償金を取得することができました。