ロウタス法律事務所の所長の高橋です。
1 本当に相続に強い事務所を作りたい
私は、「本当に相続に強い事務所を作りたい」との想いで、今の事務所を作ってきました。
(1)弁護士=相続の専門家とは限らない
弁護士は法律の専門家ですが、相続の専門家とは限りません。ほとんどの弁護士は「何でも扱う」弁護士だからです。
相続に関する事件で最も多いのは、遺産分割調停です。裁判所の発表によれば、平成26年度の終結した遺産分割事件のうち、弁護士が関与していた事件の数は8,966件です。他方、2014年3月末時点の全国の弁護士数は、35,045人です。つまり、平均値をとると、裁判所で扱う遺産分割事件の数は、「1年間に弁護士4人で1件」ということになります。仮に、申立人・相手方双方とも弁護士が関与していたとしても、「1年間で弁護士2名当たり1件」ということになります。ちなみに愛知県弁護士会は2015年から「相続専門相談」を始めましたが、専門相談員に登録する資格は、①弁護士経験7年以上・3件以上の相続事件処理経験があり、②弁護士会の研修を受けること、です。
(2)弁護士は「相続事件は、弁護士なら誰でもできる」と思っているが、現実相続事件はとても奥が深い
相続は司法試験の出題範囲です。ですから、弁護士であれば「相続を全く知らない」という人はいませんし、「試験で勉強したから、相続事件くらい処理できる」と思っています。しかし、相続は、司法試験ではマークシートの択一試験に数問出題されるだけなので、弁護士が最低限知っているはずの相続の知識は、それほど多くありません。
他方、相続では、亡くなった人が生前有していた財産と法律関係の全てを処理するので、広範囲で問題が生じます。しかも、法律の条文が少なく内容も抽象的で判断基準が曖昧なため、法律に書かれていない問題が数多く生じます。そのため、弁護士になった後に、自分で専門書を読み、多くの裁判例を勉強し、その上で実務経験を積まなければ、依頼者が納得できる相続事件の処理はできません。
また、相続特有の問題として、立証が非常に難しい場合が多くなります。例えば、被相続人の生前に、相続人の誰かが援助を受けた、または財産を勝手に使ったということが問題になったとします。これが商取引であれば、契約書があり、お金は振り込まれるか、領収書が発行される等して証拠が残ります。他方、家族間の金銭のやりとりは、契約書・領収書はなく、お金の移動も現金であることが多く、元々証拠がありません。しかも、何十年も前の出来事が問題となるので、ただでさえ少ない証拠が失われていることも珍しくないです。そのような状況で、依頼者の主張する事実を立証できるか否かについては、弁護士の力量が重要になります。
さらに、相続の事件処理では、法律以外の知識が不可欠です。相続は合意ができて終了ではなく、実際に財産が移転して(金融機関等に手続を受け付けてもらって)初めて完了します。ところが、金融機関の実務や法務局の登記実務を知らないと、弁護士であっても「手続ができない書類」を作成することがあり、再度書類の作成を余儀なくされることがあります。相続事件では、複数の相続人が遠方に散らばっていたり、互いに不仲か疎遠で非協力的な人がいることも少なくないので、再度の書類の作成が難しいこともあります。また、税務を知らないと、同じ内容の処理をしても税金の金額が変わってしまい、遺産が予想外に目減りすることもあります。
このように、相続はとても奥が深いため、「マークシート試験対策の僅かな相続の知識だけで、2年に1件程度の実務を経験するだけ」では、とても専門家といえるレベルにはなれません。
2 専門性を高めるための選択と集中
このように、本当に相続に強い弁護士になるには、相続事件に集中して勉強し、また経験を積むことが必要です。そこで、私は2010年から事務所の経営方針を改め、原則として、「相続事件と知的財産事件以外は依頼を受けない」ことにしました。
その結果、今では、相続事件だけで年間600件超の相談を受け、100件以上の事件の依頼を受ける事務所にまで成長させることができました。
3 どうして、相続と知的財産だけを扱うことにしたのか?
私は、2000年から弁護士業を行っています。
私が弁護士以外の人に名刺を渡すと、一言目は「弁護士さんだったんですか、意外ですね。」と驚かれることが多いのですが、二言目には「何が得意ですか?」と聞かれることが多くありました。そのような経験から、私は「世間の人が求めているのは、『誰でもいいから弁護士』ではなく、『この事件なら任せてくださいと言えるほど専門性の高い弁護士』のはずだ。」と感じていました。
そこで、弁護士として10年の経験を積んだところで、改めて「自分が依頼者に最も役に立てる分野は、どの分野だろうか?」と振り返ってみました。すると、特に、知的財産事件と相続事件について、一般的な弁護士より経験数が多く、また、処理内容についても、他の弁護士が敗訴した事件を逆転する等の成果をあげていたことがわかりました。そこで、「依頼者の役に立つ弁護士」になるために、「これからは相続と知的財産事件に集中して、この分野のスペシャリストになる」と決意しました。
今でこそ、「相続事件が得意です」と宣伝している弁護士は珍しくなくなりましたが、2010年当時は、ほとんどの弁護士は「過払い金事件バブル」に夢中になっていましたので、過払い事件を全く取り扱わずに相続ばかりやっていた私は、周りの弁護士から、かなり「変な人」扱いされたことを覚えています。
4 私達が専門性を高めるために行っていること
ロウタス法律事務所の弁護士は、常時相続事件を30件程度担当しており、平均的な弁護士の何十倍もの数の相続事件を経験しています。
もちろん、多くの経験をすれば、それだけでも、それなりに専門性は高まるのですが、当事務所では更に専門性を高めるため、こんな工夫をしています。
(1)地道に知識を学んでいます
弁護士として良い仕事をするためには、法律と裁判例の知識が不可欠です。しかし、弁護士は毎日事件処理で忙しく過ごしているので、勉強時間を取ることが難しいのも確かです。そこで、当事務所では、毎週1日午前中を強制的に勉強の時間に充てています。所内の全弁護士が集まって、相続に関する最新判例の研究、論文・書籍の読書会と意見交換、外部研修の内容の発表と共有等を通じて、相続に関する学術的な知識の習得に努めています。
また、現在は、事務所として弁護士向けの専門書の執筆を依頼されており、事務所の全弁護士が分担して執筆作業をしていますが、執筆作業を通じて改めて相続の条文・判例・学説の確認を行っています。
さらに、定期的に、元国税庁の税務官の税理士や、税理士試験予備校で相続税の講師を務める税理士等が所属する相続税に強い税理士事務所との合同勉強会も行い、最新の税務知識の習得にも努めています。
(2)終わった事件を徹底的に検討します
ほとんどの法律事務所では、終わった事件はやりっ放しになります。
しかし、裁判所が審判や判決を出した事件は、裁判所の考え方を知るための情報の宝庫です。また、審判や判決に至らなかった事件でも、担当した弁護士の証拠の集め方・作戦の立て方・書面の書き方には、他の事件にも生かすべきノウハウが詰まっています。
そこで、当事務所では、終了した事件をやりっ放しにするのではなく、弁護士全員の参加する会議で時間をかけて徹底的に検討して、「次に同じような事件の依頼を受けたときに、生かすべきこと」「改善すべき点」を抽出し、全員でノウハウを共有しています。
5 私達が依頼者の納得のために工夫していること
(1)事件処理内容の共有
当事務所では、事件処理の内容・経過は、細部にわたって記録されており、しかも、データベースで共有されているので、簡単な操作で、誰でも事件処理内容・経過が一目でわかるようなシステムになっています。
(2)全ての弁護士による検討
事件毎に担当弁護士が決められていますが、担当弁護士が不安を感じたり悩んだりした点は、事務所全体の会議にかけて、全員の知恵を出し合って最善の処理方法を検討しています。
このような全員による検討が可能なのは、(1)で説明したデータベースがあるからです。
また、当事務所では、「勉強のための会議」のほかに、この「事件処理方針を検討するための会議」も毎週欠かさず行っています。
(3)報告と説明
遺産分割は、「現実に存在する財産を分ける」処理であり、相手のあることなので、私達が最善を尽くしても、依頼者の希望が全て叶うとは限りません。それでも、依頼者の方が後で「こうしておけば良かった」と後悔することのないよう、報告と説明にも工夫をしています。
事件処理において、依頼者の方が納得して決断をするためには、依頼者の方に、弁護士と同じように事件を理解していただくことが必要です。
そのため、まず、報告については、裁判や調停でのやり取り、電話等による相手とのやり取りを、詳細まで細かく書面で報告しています。また、事件の記録も、弁護士が持っているファイルと同じファイルを事務所で準備して依頼者に持ってもらい、弁護士と依頼者が同じ情報を共有するようにしています。
次に、説明についても、打ち合わせ室で、ホワイトボード・プロジェクター等も使いながら、わかりやすく時間をかけて説明しています。具体的な説明の方法についても、私を中心に、絶えず「より分かりやすい説明の仕方」を研鑽しています。ちなみに、私の法律相談の手法は、「法律の素人でもとても分かりやすい」と評判が良く、全国の弁護士向けのセミナーで取り上げられ、さらに、書籍化もされ、多くの弁護士に参考にされています(学陽書房「相続相談の技法」 amazonベストセラー1位2015年10月19日 遺言・相続・贈与)。
6 弁護士選びにもっと手間をかけてください
相続事件で争うことは、一生に一度あるかないかです。ですから、どんなに頭のいい人でも、社会経験が豊富な人でも、相続については「初心者」です。そのため、争いになった場合の結果は、依頼した弁護士の力量や戦略に大きく左右されます。
法律の素人が、弁護士に依頼した後に、自分の依頼した弁護士を説得して、弁護士に処理方針や処理内容を変えさせることは事実上無理でしょう(それが可能な人は、弁護士に依頼する必要がありません)。
しかし、法律の素人でも、複数の弁護士に会って話をすれば、「誰が一番経験と知識が豊富か、また、持っている能力を自分のために熱心に使ってくれるか」を感じることはできます。具体的には、いくつかの法律事務所で法律相談を受けて、弁護士を比べればいいのです。
ほとんどの依頼者は、初めて弁護士を依頼する人ですので、「法律事務所に行くこと」も、その前の「相談しようと決意して、法律事務所に電話をすること」もとても面倒で、且つ勇気のいることだと思います。
そんな皆さんに、「もっと手間をかけてください」と言うのは正直心苦しいです。でも、数多くの相談を受ける中で、「相続事件を何となく処理して、後から何年も後悔している人」を数多く見てきました。また、当事務所には、弁護士を変更して当事務所に依頼をされる方が多いため、「弁護士によって結果が変わった」、「弁護士を変えたことで、事件処理中も安心・納得できるようになった」事件も数多く見てきました。
だからこそ、勇気を出して弁護士事務所を訪れようとしている皆さんに、さらにこのような事を申し上げるのは心苦しいのですが、「もう少しだけ頑張って、いくつかの法律事務所を回ってみて、悔いない事件処理のために、悔いのない弁護士選びをして欲しい」と思います。
7 最後に1つだけお願いと1つだけお詫びがあります。
まず、お願いですが、もし当事務所に依頼をされる場合は、「遠慮せずに、何でも、いつでも弁護士に連絡する」ことだけ守ってください。私達には、相続事件に関しては、他のどの事務所にも負けないだけの経験・知識・実践から得たノウハウがあります。しかし、私達の能力を最大限使うためには、調査を行ったり作戦を検討するためのキッカケとなる情報が必要であり、通常そうした情報は、依頼者の方だけが持っています。
人生の中で、相続争いに巻き込まれることは1度か2度あるかどうかです。つまり、依頼者の皆さんは相続事件の初心者です。ですから、私達は依頼者の方に、「役に立つ良い情報だけください」というお願いはしません。また、私達は、「依頼者は誰でも相続の初心者だ」と心得ていますから、依頼者の方に何を聞かれても「そんなことでイチイチ連絡しないで下さい。」と対応することもありません。
私達は、相続事件のスペシャリストとして、依頼者の方に、「できることは全てやって、できる範囲で最善の選択をした」と思ってもらえる事件処理をしたいと心から願っています。
依頼者の方が私達に対して、「何でもいつでも連絡できる」関係であれば、きっと事件処理の過程で必要な情報を得て、「やり残し」のない事件処理を行うことができるはずです。
ですから、依頼をされる方は、どうか遠慮をせずに、何でもいつでも連絡してください。それが、依頼をされる方へのたった1つの私達からのお願いです。
次に、お詫びですが、相続事件は大抵、相続人の間で利害が対立します。私達は長男から相談を受ければ、長男の希望を叶えるための最善の方法をアドバイスしますし、次女から相談を受ければ、次女の利益になるアドバイスをします。そうすると、長男の相談を受けた後、次女の相談を受けると、次女には「長男の不利になること」をアドバイスすることが多くなります。ですから、同じ事件では、最初に当事務所に来られた方しか相談をお受けしませんし、アドバイスもしないことにしています。そのため、既に他の相続人の方が当事務所を利用されていた場合は、ご相談やご依頼をお断りさせていただきます。誠に申し訳ありません。
せっかくご連絡をいただいたにかかわらず、お断りをするのは大変申し訳ないのですが、何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます。